書いてくれた方★
40代(女性) / ペット種類:猫

投稿内容

今回は、うちで飼っている猫の感動のお話をどうしても形に残したく応募しました。

よろしくお願い致します。
 
これはもう、14年くらい前のお話です。
我が家の庭に猫が迷い混んできて、窓の外から家の中を覗いていました。
我が家は、私も子供達3人も皆猫が大好き。
夫を除いては…。
夫だけは猫が苦手でした。
飼ってあげたい気持ちもありましたが、それまでには2匹同時ではありませんが、猫を飼っていたことがありました。
一匹目は、今の家に引っ越してから間もなく、姿を消してしまいました。
2匹目は、家の前の道路で車に跳ねられ死んでしまいました。
そんなことかあったので、もう、飼うまいと思っていたので
心を鬼にし、子供達に
何処か遠くの人目に付くようなところに置いてきなさいと言いました。
誰かに飼って貰えるように。
しかし、次の日もその猫は
前の日と同じように庭に来て、家の中を覗いていました。
おそらく、子供達はうちで飼いたくて、遠くには連れていかず、近くに置いてきたんだろうと思います。
 
私も飼いたくて仕方なかったのですが、やはり夫のお許しがなければ…
しかし、私が頼む前に夫から
『飼ってやるしかないか』と言ってくれました。
その日から、その猫も家族の一員になりました。
 
名前はタマ。
正式には、タマ3世です。
悩むことなく、猫の名前と言ったらタマ。
なぜか、私も子供達もそう思っていました。
ですから、初めて飼った猫はタマ。
2番目は、タマJr.
なので、3匹目はタマ3世となったわけです。
 
飼い始めて9か月位の事です。
夫の会社の人達と、家から2時間半以上掛かる所にキャンプに行くことになりまた。
猫は犬と違い、人にではなく家になつくものだそうですね。
そんなことも知らず、一緒に連れていきたいと言う子供達に押され、一緒に連れていくことになりました。
おそらく、タマはずっと怯えて居たことでしょう。
もちろん、逃げないように
首輪にリードを付けてしっかり捕まえていました。
到着したキャンプ場で、タマは思いの外落ち着いていて安心していました。
しかし、やはり知らない土地に連れてこられて、怯えていたのでしょう。
ちょっと手を離した時に
一目散に何処かに逃げてしまいました。
山の中の森のような広大なキャンプ場でした。
周りは樹が生い茂っているような所で探すのは容易ではありません
キャンプ場の人によれば、この辺は狸がいるから、今日見つからなかったら、狸にたべられちまうだろうと言われました。
それでも、3日間の滞在中
遊ぶのも忘れ、ずっと子供達と探して歩きました。
見つからぬまま、帰らなければならない時間になってしまいました
タマを置いて帰るのは嫌だと言う子供達に
絶対に見つかるから大丈夫。
と、私自身諦めの気持ちの方が強かったけれど、そう言って子供達を慰めるしかありませんでした。
正直、猫があまり好きではない夫も、子供達が可哀想で一生懸命探しました。
子供達のために、次の休みの日にも探しに来ようと決めていたようです。
そして、キャンプ場関係の方達が本当に親切な方ばかりで、タマを入れて来た籠とエサを置いていきなさいと言ってくれました。
いなくなってしまった近くに置いておけば、戻ってくるかもしれないと言って預かってくれたのです。
キャンプ場は高台にあり、山を下り、キャンプ場入り口近くは、旅館やペンション、お土産屋がたくさん有るところでしたが、回覧板を廻して、皆に気にして貰えるようにしておくからと、本当に優しい方ばかりでした。
ひと晩見つからなかったら、狸にたべられちまうだろうと言っていた言葉があったので、もう、タマは帰ってこないかもしれないと諦めの気持ちでしたが、皆の親切な気持ちにほんの少し期待もありました。
 
1週間後の夫の休みの日を待つことなく、キャンプ場の方から電話がありました。
見つかったよ。
と…
信じられませんでした。
その時の子供達の喜びようったら、本当に嬉しそうでした。
直ぐにでも迎えに行きたい気持ちを抑え、電話を貰って2日後に家族みんなで迎えに行きました。
車の中での時間がとても長く感じました。
3時間弱、車を走らせ、ようやくキャンプ場に到着し、ドキドキしながら電話をくれた方のところに行きました。
その方も、笑って嬉しそうにタマを預かってくれていた籠にいれて待っていてくれました。
籠を手渡され、子供達が逃げないようにソッと籠を開けました。
タマ。と、声をかけながら…。
すると、中に居たのは
確かに似ている猫ではありましたが
タマではありませんでした。
電話をくれた方も、焦ったように驚いていました。
とても喜んで迎えに行った子供達の絶望感は半端ではなかったと思います。
もちろん、わたしも夫も同じ気持ちでした。
帰りの車の中は、泣いている子供達を慰める事で約3時間が過ぎてしまいました。
もう、1週間以上。
もう、タマが帰ってくることはないのかもしれないと
私も子供達も感じていました。
しかし、夫は諦めていませんでした。
無理かもしれないと思いながらも、毎週独りでキャンプ場まで行き、探していました。
子供達も行きたがりましたが、見つかる保障がない所で延々と探し、また悲しい思いはさせたくないと
独りで出掛けていました。
それは、4週ほど続けました。
でも、残念なことに見つからず仕舞いでした。
いよいよ、夫も諦めてしまいました。
それだけ探しても見つからない。
やはり、キャンプ場の方が言っていた通り、タマはもう生きていないのかもしれない。
キャンプ場の方にタマの籠とエサを預けたまま、探すことを諦め、子供達も少しずつ元気になりました。
 
タマを連れていかなければ良かった。
後悔しても遅いけれど、後悔しかありませんでした。
 
タマが居なくなって、1ヶ月半。
突然、キャンプ場の方から電話が来ました。
再び、見つかったと言う内容でした。
 
一瞬、嬉しさが込み上げましたが、直ぐに
きっと、また違う猫に違いない。
そう、冷静に思いました。
もう、相当な時間が経っている。
タマなわけがない。
そんな風に思いました。
 
ですから、また子供達を悲しませてしまう事になるかもしれないと、キャンプ場へはやはり夫独りで出掛けました。
夫からの連絡があるのを
まだかまだかと落ち着かない時間が過ぎていきました。
4時間位経って、やっと夫から電話がありました。
何と言ってくるか、怖かったです。
 
『タマだったよ』
信じられない言葉でした。嬉しくて、涙が溢れてきました。
子供達にも直ぐに伝えました。
3人とも、直ぐに喜んで飛び跳ねるのではなく、信じられないと言った表情をしていました。
 
『今から帰るから』
そう言って、電話を切りました。
夫が帰宅するまでの時間は、本当に長く感じました。
タマが生きていた。
今思い出しても、涙が出てきます。
 
ドキドキして、何も手につかない時間は、3時間位でした。
やっと、夫がタマを連れて帰ってきました。
子供達と私は、外に出て迎えました。
そこには、運転する夫の脚の上に乗り寝ていたタマでした。
 
実は、夫は猫が苦手なだけあり、家で可愛がったことなどありませんでした。
ですから、タマも夫に近寄ることなど無かったのです。
私には、寄ってきますが
やはりタマが好きなのは子供達。
可愛がってくれる人はわかるんです。
 
そんな夫の脚に乗り帰ってきた。
きっと、タマも飼い主に会えて安心したのでしょう。
 
とにかく、家に上げようと
近くにより抱き上げようとしたら…
ショックでした。
大袈裟でも何でもなく、骨と皮だけのような、居なくなってしまったときとは、全く違う姿になっていました。
抱き上げるのも怖いほどでした。
骨が折れてしまうのではないかと思うくらいのガリガリになってしまい、今度は可哀想で涙が出てきました。
 
家に入れても、何かにとても怯えている様子で部屋の隅に隠れるようにしていました。
 
居なくなる前は、安心しきって、お腹を上にして寝たりしていたのに…
 
きっと、この約2ヶ月の間、ずっと怖い思いをしていたのでしょう
そして、食べ物もなく、さ迷い続けて、こんなにも痩せ細ってしまったんだと思います。
 
何にしても、タマは生きて家に帰ってきた。
信じられない出来事でした。
 
タマが見つかったのは、あの親切なキャンプ場の方達のお陰でした
言っていた通り、山を下りた所にある旅館やペンション、お土産屋に回覧を廻して下さっていたのです。
 
そして、見つかったその日、ペンションの庭から中を覗いている猫が居ることに
そのペンションの小さな男の子が見つけたのだそうです。
それを母親に伝え、母親は
『これはもしかしたら、以前回覧で廻ってきた猫ちゃんかもしれない』と思い、
キャンプ場まで連絡を入れてくれたそうです。
 
夫が迎えに行ったとき
姿はだいぶ違ってしまっていましたが、直ぐにタマだとわかったそうです。
『タマ』と声をかけると、フラフラした足取りで旦那に近づいてきたそうです。
キャンプ場の方に
『やっぱり飼い主は分かるんだなぁ』と言われたそうです。
 
そうして、約2ヶ月ぶりに
タマは自宅に帰ってくることができました。
 
奇跡と言うのは、大袈裟かもしれませんが
本当に奇跡のような出来事だと思っています。
 
何よりもタマが帰ってこれたのは、親切なキャンプ場の方々のお陰でした。
あの方々が親身になって、協力してくれなかったら、タマが帰ってこれることは絶対にありませんでした。
 
感謝の気持ちでいっぱいです。
 
ですが、タマが帰ってきて数日後、キャンプ場の方から手紙が届きました。
内容は
『ペットはもちろん、自分の子ですら虐待をする人間が多く居る中、たった一匹の猫のために一生懸命探すことを諦めない家族に深く感動しました。たった一匹のとは言え、大切な家族なのですね。素晴らしい家族の姿を見せて頂けたこと、本当にありがとうございました。』
と言う内容でした。
 
ありがとうと言いたいのは、私たち家族の方なのに…
 
タマは半月以上、家の中の隅から離れられずにいました。
寝るときも、だらしない以前のような安心しきった格好をすることもなく、常に怯えている様子でした。
でも、それは少しずつ少しずつ改善されていきました。
ここは、タマの家ですから。
 
体型も部屋の隅から少しずつ出て来れるようになるのと同じように、少しずつ元の体型に戻ってきました。
 
あれから14年。
3人とも小学生だった子供達も皆成人し、長女には2人の子供も居ます。
 
タマは…
まだまだ元気にしています。
もう、おじいちゃんだろうと思いますが
まだまだ独り運動会をするほど元気です。
 
そして、子供が帰宅し、座ると同時に一目散に子供の胸に飛び乗り、顔を向かい合わせになるような格好で
そこで寝るんです。
 
子供達は、
『タマかわいいかわいい』と今でも可愛がって居ます。
可愛がってくれる人はわかるんですね。
 
このタマは、奇跡の猫だと思っています。
まだまだ、長生きしてもらわないとと思っています。